随想 赤い電車

赤い電車と過ごした日々

決して居場所がない訳ではなかった。みんなといる場所も、ひとりになる場所もありはした。だけど時々息苦しくて、本当の意味でひとりになりたい時、逃げ出すように駅へ向かったものだった。

夜が多かった。よくベンチに腰掛けて行き交う電車を眺めてたな。基本PASMOだから、最後は必ず電車に乗るんだけど。
しばらく眺めこむ日もあったし、電車が来たらすぐそれに乗り込んだ日もあった。
必ず「赤い電車」に乗ってね。あの頃は何本か待てば来たし、来なければ来るまで待った。

あのころは悩みが多かった。それは今もか。多感だったのね。
電車に乗ってどこへも行かない。ただ電車に乗ってるだけ。気の済むまで乗って、飽きたら帰ればいい。
赤い電車に乗って、何もしない。スマホを見たり、車窓に目をやったり。周りを眺めてることが多かったかな。よく走行音を録ってたな。車端部の所にスマホを置いて。
車内には他に数人居るかどうか。こっそり窓を開けたりして。今と違って開けづらかったからな。 私大人になったから。色々見えてきたの。